「け、慶人君がどうしてここに…!?」
「サークルのみんなと、大学から近い神社といったらここかな?って。 もしかして会えたりしてと思ってたけど、まさか本当に会えるとは思ってなかったから、嬉しい。」
本当に、心から嬉しそうに笑う慶人君に胸がきゅんとする。
「慶人君待ってよーう!」
サークル仲間と来たのはどうやら本当のようで、人並みをかき分けて見覚えのある女の人が走ってきた。
「ハァッ、ハァッ…! もうっ! 急に走り出すから、みんなビックリしたでしょうっ!?」
「それはすみませんでした、千波先輩。 わざわざ走って追いかけて来てくださって、ありがとうございます。」
優しいですねと付け加えてにっこり笑う慶人君に、怒っていた赤羽先輩の顔がみるみる違う意味で赤く染まる。赤羽先輩に続いて、ぞろぞろと慶人君の名前を呼びながら人が集まり始めた。
「あ、あのっ、お詣りの邪魔になるので、私はこれで……!」
光の速さで参拝を済ませて走り出す。
まだどんな返事をするか決めていないどころか、会って話すための心の準備もできていない。なにより隣に慎司君がいるのだ。
「あっ! 静香ちゃん!」
振り返らない私に構わず、周りに大勢の人がいるにも構わ、慶人君は呑気に叫ぶ。
「返事はいつでも構わないから、また一緒にご飯食べてくれたら嬉しいです!!」
思わず振り返る。周囲の人はどよめき、私と慶人君に交互に好奇の視線を向けてきた。
少しいたずらっぽく、お茶目ににっこりと笑う慶人君が真っ直ぐに目に入ってくる。
そ、そんな言い方をしたら…!
すぐそこで、立ち止まった慎司君に目がいく。
慎司君の表情は読めなかったが、周囲の人と同様にきっと察しただろう。
私がクリスマスに告白されたこと。それにまだ応えられていないこと。慎司君に黙っていたこと。ずっとそのことで悩み続けていたこと。
それから家に帰り着くまで、慎司君は終始無言を貫いた。

