「初詣は……」
続けて話してくれると思っていたが、言い淀む慎司君。視線を逸らすので、それを追いかけて顔を覗き込めば、すぐさま大きな手のひらで顔をぐいっと押し返された。
「初詣は、静香と正月っぽいことが出来たらと思っただけだ。」
これは、照れているのだろうか…?
「慎司君が可愛い…んぶ!」
「次、御手水」と顔を掴まれ、ぐるんと身体の向きを変えさせられた。御手水を一緒に済ませると、律儀にハンカチとカイロを差し出してきた。脳裏に保護者かと言っていた一華ちゃんが浮かんでくる。
「ありがとう。 でも慎司君のは?」
「ある。」
嘘だ。
私は冷えている方の手を、慎司君のダウンのポケットに突っ込む。するとビクッと大きく身体を跳ねさせて、私を睨んできた。まったく怖くない目で。
「嘘はよくないと思う。」
ポケットに仕舞われていた手は、やはりとても冷えていた。そこへカイロを入れてあげると、そのまま手を掴まれる。
「…静香も。」
「ん?」
「嘘は、つかないでほしい。」
ちょうどよくお賽銭箱を前にして立ち止まる。
「何か悩んでることがあるんじゃないか?」
墓穴を掘ったと、今気づく。
「クリスマスの日、ナツキと何があったんだ。」

