「準備はいいっすか〜?」
荷物を乗せ、高橋君がエンジンをかけながら振り返る。いつもならここで一華ちゃんがハイテンションで返事をしそうなところなのだが、しばらくご機嫌斜めなようで。私が代わりに、恥ずかしさを堪えてはーいと答える。
運転は、最初は高橋君。助手席には慶人君。後部座席には私を真ん中に、既に眠る体勢に入っている慎司君と、ぶすっとした一華ちゃんが座った。
「これ大丈夫?」
今から旅行が始まるというのに、雰囲気の悪さに苦笑する慶人君。
「ごめんね高橋以外の人。 あと5分待ってくれたら切り替えるから。」
5分で良いんだ…。
「じゃあ行くっすよ〜!」
車が走り出す。
慶人君と再会した時は、ぶり返す慶人君への気持ちと、慎司君への申し訳なさで消えてしまいたくなった。再会したことを悔やんでいたが、今はそうではない。再会していなければ、慎司君への気持ちに気づくことも、慎司君の気持ちに気づくこともなかっただろう。
走り出して間もなく、私にもたれかかり、眠ってしまった慎司君に、私も身体を預ける。
「おーい。 早々からイチャイチャすんな牧瀬ー! 起ーきーろー!」
「僕達がいるんだけどなぁ。」
無反応の慎司君に、くすっと笑ってしまう。本当は聞こえていることを、繋がれた手を通して、私だけは知っていた。
これからもずっと、こうして、慎司君やみんなといられるといいなと、夏らしく晴れた空を見ながら、私は思うのであった。

