味見であんなに美味しかったカレーも、いざ食べてみると、甘味を感じなかった。それは、時折交わる視線の方が、甘ったるかったからだろう。
いつも以上に、会話はなかった。けれど心は同じな気がした。
お風呂上がり。寝室で慎司君を待っている間のドキドキは、きっと何年経っても忘れることができないだろう。これまで何度も一緒に寝てきたのに、初めて一緒に寝た時以上に、緊張している。
ゆっくりと扉を開けて入って来た慎司君も、同じ気持ちなのだろうか。
ベッドに腰掛ける私の前に、いつまでも立ったままの慎司君の手を取る。
「寝ないの…?」
「ん…。」
指と指を絡めて、お互いの意思を確かめ合うように、何度も何度も指を組み替える。
好き。この手も、この眼差しも。全部全部、愛おしい。
「明日も仕事でしょう?」
「静香は?」
「一華ちゃんと水着を買い物に行こうって話してる。」
「水着か…。」
「うわっ!?」
ごろんと慎司君と一緒にベッドに倒れ込む。慎司君の腕の中。最初は緊張していたのに、いつしか安心する場所になっていた。この温もりを感じない夜は、とても寂しい。
「水着、あんまり可愛くないやつにして。」
「え? 何で?」
慎司君がおでこから順番に、キスをしながら下りてくる。
「何ででも。」
唇を避けて、胸元や腕、指先までされるキスがくすぐったい。
「可愛いの、見てほしいのに?」
「静香は、十分可愛い。」
普段そんなことは言わないのに、雰囲気に酔っているのだろうか。
大切に、大切に、触れてくれる手がこそばゆい。
もっと触れてほしくて首に手を回すと、くるんと体勢を返された。
「静香。」
強く、そっと、絡まる指。ぼうっとする視界の中に、慎司君だけがくっきりと映る。
私を見つめるその視線も、触れ合うところも、全てが熱を持っている。
「いい…?」
ずっとずっと、大切にしてくれた。きっと、これからも、もっと、そうしてくれるはず。
「初めてだから……」
私がどれほどあなたを愛しているか、誰にも分かりはしない。
きっと慎司君にも、分かりはしないから。
それでも、少しでも気持ちが伝われば良いなと、慎司君の顔を引き寄せて、初めて私からキスをする。
「優しくしてね?」
大好き、慎司君。 もう、揺らがない。

