やや垂れ気味の、くるりとした小動物のような目で見つめられ、言葉に詰まった。
ようやく気づいてくれた嬉しさと、気恥ずかしさ。そして、相手にどう受け取られたかという心配に襲われる。気持ち悪がられただろうか、それとも…。
「慎司君?」
少し前まで、その目が追うのは別の奴だった。
最初は見ているだけでよかったのに。その目に映りたくなって、話してみたくなった。知り合えばもっと、深い仲になりたくて。けれど向こうはそうでもなくて、ここにいない誰かを、ずっと想っていた。
自分の思いは彼女にとっては邪魔になる。だから最後に、花に想いを託すなんて似合わないことをして、卒業時に彼女と関わるのは終わりにしようと思っていた。泣いている姿を見るまでは。
弱ったところに付け入る形になってしまったが、それでもいいと思った。どんな形でも彼女の傍にいれるなら、それを許して貰えるなら…。
そう思っていたのに、いつからか、欲が出た。その欲は、彼女の想い人が現れても消えることはなかった。むしろ増えるばかりだった。
彼女が、想い人と自分の間で揺らいでいるのが、嫌な反面たまらなく嬉しかったのだ。自分が天秤に掛けられているということは、それくらい彼女にとって重要な人物にまで登りつめてきたということ。それが素直にまずは嬉しかった。
そして間もなく奇跡は起きた。彼女が俺を選んでくれたのだ。
「…ミモザ。」
花に託して忍ばせていた想いにも、今気づいてくれた。恥ずかしいけれど、こんなに嬉しいことはない。これまでの自分が報われた気がした。
「知ってたの…!?」
ミモザの花言葉が載るページを見せる静香の顔は真っ赤になっている。
私がどれほどあなたを愛しているか、誰にも分かりはしない。
それくらい好きだったと、ようやくわかってくれたのだろう。ならば、もう秘する必要もない。
ずっと、ずっと好きだったんだ。

