恋は揺らめぎの間に




家中に広がる、カレーのいい匂い。それよりも好きな、慎司君の匂い。カレーを煮込む慎司君の背中に抱き着いて、私はそれを堪能していた。



「さっきから、どうかした?」

「んー…。 久しぶりだから。」



生活リズムが違うため、慎司君が休みの日しか、一緒に過ごすことができない。ぐりぐりと頭を擦り付けれると、振り返った慎司君が止めてと赤い顔で引き離す。




「反応に、困るから。」

「困っていいよ?」



そんな慎司君を見るのも好きなのに。よくないよと、小皿にカレーを注いで味見を勧められる。辛いものが好きな慎司君だが、作ってくれたカレーは牛乳入りの甘いカレー。私の好みに合わせたカレーだ。



「美味しい…。」



慎司君の、こういう優しさが好きだ。

少し寝かせてから食べようと、慎司君はリビングのいつもの定位置に座る。私もその隣、いつもの定位置に座った。



「それで、何かあった?」



夏木と買い物に行ってたんだろう?と言う。

ネックレスのことも聞きたかったし、特に隠し立てすることでもないかと、口を開く。



「…今日、嶋さんに会ったの。」



テーブルの上。コップに伸ばしていた手が、ぴくりと反応した。慎司君の表情は変わらない。



「…何か言われた?」

「妹だって…まだ勘違いしていたみたい。」



その先は言葉を濁す。慎司君と日々顔を合わせて仕事をする人だ。気まずい思いはさせたくないが…



「慎司君、嶋さんと何かあったりした…?」



嶋さんの、棘を感じる言葉が気にかかった。