恋は揺らめぎの間に




嶋さんはにっこり笑う。



「あっ、彼女だったの!? 慎司からも聞いたことがなかったから…。」



ごめんなさいねと謝りながら、嶋さんは踵を返す。



「慎司、今日は日勤だからもう帰って来る頃じゃない? 彼女なら早く帰ってあげなね〜。」



去り行く嶋さんの後ろ姿が見えなくなって、ようやく息を吸えた。私達の間に入ってくれた慶人君も、同じように息を吸う。



「大丈夫? 静香ちゃん。」

「うん。 それよりごめんね慶人君…。 ありがとう。 私の代わりに、言ってくれて。」



そのくらいなんでもないさと慶人君は笑う。



「牧瀬君は静香ちゃんのこと、ちゃんと大切に思っていると思うよ。」

「え?」

「だからさ、そんな顔しなくていいよ。」



ぽんぽんと頭を撫でられる。

私は今、どんな顔をしていたんだろうか…。



「牧瀬君と、もうこのことは話したの?」



慶人君がトントンと自分の首元を指す。

ネックレスをそっと摘み、私は首を横に振った。今日は夕方に帰って来ると聞いていたので、そこで聞こうと思っていたのだ。



「じゃあ、聞いてみるといいよ。」

「うん…。」

「それと、あんまり僕の前で、揺らがないで。」



切実な声にハッとして顔を上げると、慶人君が少し泣きそうな顔で私を見つめていた。



「……わかった。」



ごめんね、慶人君。ありがとう。