慎司君から何も聞いていないのだろうか。それとも、わざわざ言っていないだけなのか。
いつもお世話になってます…?
どうして呼び捨て…?
先程まで楽しく買い物をしていたのに、心の中が黒く塗りつぶされていくようだった。
「彼氏さんとデートかな?」
「いえ、彼氏じゃ…」
「じゃあ、この前カラオケで見かけた外国人の彼が彼氏?」
「え?」
確かに先日、イーリャ君がカラオケをしてみたいと言うので、一華ちゃんと連れて行っている。あの場に嶋さんもいた?
「カラオケの時はチラッと見えただけだから自信がなくて、あの時は話かけられなかったの。」
ごめんね〜と笑う嶋さんの言葉の節々に、棘を感じるのは気のせいだろうか。
「妹さんに彼氏が出来たら、慎司も安心して家に彼女を呼べるわね。」
「あのっ……」
「この子が、その彼女ですよ。」
珍しく語気を強めて、慶人君が言った。
私を守るように前に出て、嶋さんとの間に立ってくれる。
「牧瀬君の職場の方ですよね? 牧瀬君が彼女と一緒に住んでいるのをご存知ないんですか?」
慶人君はおかしいなぁとわざとらしくとぼける。
「アナタは僕と一緒に、牧瀬君が彼女と家に入る所を見たと思うのですが。」
確かに、と思う。
嶋さんは酔っていたようだったから覚えていないようだが、初めて彼女と会った時、隣には慶人君が確かにいた。

