「シズカ、照れてる。 カワイイ!」
頬に人差し指を当てて、カワイイポーズを披露する。その横で真似して一緒にポーズをとる彼女に貸していたノートを取り上げた。
「あっ!」
「一華ちゃんにはもう貸さない!」
「静香ごめん〜! ほら、イーリャも!」
二人でごめんなさいと謝る姿に、仕方がないと取り上げたノートを返す。私は今日のテストは終わったのだが、一華ちゃんはこの後まだテストが残っているのだ。去年落としてしまった、必修科目のテストが。一華ちゃんに貸したノートは、去年のその科目のノートだった。
イーリャ君はテストがないのに、一華ちゃんにぴったりとくっついて、一緒にノートを覗き込んでいる。たまにノートの影に隠れてこそこそとキスしているのが、音で丸わかりだ。少し前に付き合い始めたという二人だが、かなりラブラブだ。
そんな二人を目にして溜め息をつくと、隣の慶人君も同じように溜め息をついた。
「僕達がいるのに、二人の世界だね。」
「いつもこうなの…。」
「でもまあ、イーリャが言うことはわかる。」
「え?」
「静香ちゃん、綺麗になったよ。」
顔を覗き込む慶人君のあざとさに、顔が勝手に赤くなる。
「慎司君と上手くいってるみたいで、残念。」
茶目っ気たっぷりに笑う慶人君は、冗談か本気か、未だに私に甘い言葉をかけてくる。私はそれをだいぶ軽やかにかわせるようになってきていた。
それもこれも、慎司君のおかげだ。
慎司君は私をとことん甘やかした。家にいる時は常に傍で身体をくっつけて、手を握ってくれている。口数は依然として多くはないものの、私に向ける目も、触れる手も、とても優しい。夜は腕枕をしてくれて、おやすみのちゅーは欠かさない。
私を大切に大切に、愛おしんでくれる慎司君に、私は日々、どんどん好きになっている。
「ケート、シンジに会ったこと、アル?」
「イーリャはないの?」
イーリャ君は一華ちゃんから離れようとしないので、私達の集まりにイーリャ君も顔を出すようになった。そしてすぐに慶人君と仲良くなったようだ。名前で呼び合うのはもちろん、二人で一緒にご飯へ行くようにもなったらしい。
「ないね。 だから、会ってみたい! シンジ、ロマンチスト。 きっと、僕と話合うネ!」
「慎司君が?」
ロマンチスト?と皆で首を傾げる。
慎司君を例える言葉としてはあまりに聞き慣れない言葉だった。

