恋は揺らめぎの間に




「…触っていい?」



ドキッと心臓が大きく跳ね上がった。



「触りたい…。」



いつの間にかテーブルに置かれた携帯が目に入る。慎司君が言った台詞は、先程まで読んでいた漫画のワンシーンと全く同じだった。
読んでいた時は、キャ〜っと思うだけだったのに、実際に言われると、どうしてこんなに、堪らなく胸が苦しくなるのだろう。

漫画のヒロインは、何て答えていたのだろう。
この誘惑を前に。



「あ…。」



慎司君の身体が覆い被さるように迫り、繋いでいなかった方の手も繋がれた。指先を這う慎司君の指の感触が生々しい。全神経がそこに集中して、慎司君を感じ取りたがっているのがわかった。



「わ、私っ……」

「ん?」

「今日は、水族館ので…いっぱいいっぱいでっ…! 慎司君と、こ、こういうの…か、考えられなくて…!」



慎司君がこういうことするタイプとは思わなくて、と振り絞って言う。



「今日の今日で、まだ、早くない…?」



慎司君はふっと笑う。



「俺は、かなり待ったよ。」



ちうっと唇を吸われる。

目を合わせたまま繰り返されるキスに、頭がぼーっとする。その間に抱き上げられて、慎司君の膝の上に横抱きに座り直された。

大事に、大事に、頭を撫で、頬を撫で、私の身体を優しく撫でる慎司君。そこにいつもの遠慮やぎこちなさはなく、慎司君の欲情を感じる。



「静香…。」

「っふ…。」



キスの合間に名前を呼ばれ、心も身体もとろとろにとろけてしまいそう。そんな状態で、



「今日から、一緒に寝たい。」



そんなことを言われて、誰が断ることができるだろう。
私は力の入らない手を慎司君の頬に添える。



「私も、一緒に寝たい…。」



慎司君はまた、本当に嬉しそうに笑った。