【作戦ファイルその4・イチャイチャしよう】
「付き合ってからすることって、デートやチューだけじゃなくって、それ以上のこともするよね?」
一華ちゃんの一言に、食後のドリンクを楽しんでいた全員がむせた。
「…佐伯さん、それ、今していい話っすか?」
お昼の時間帯に、それも大学の賑わう食堂で。
視線を不自然に泳がせるみんなが何を想像したのか気づいた一華ちゃんがニヤリと笑う。
「あら。 健全な、イチャつき方の話よ?」
てっきり、付き合ったらいつかはするだろう最終ステップの話をしているのかと思っていた私は、恥ずかしくなってストローでカラコロと氷を無意味に遊ばせる。
「健全なイチャつき方って、また……」
何を言い出すのかと呆れ顔の高橋君。すぐに立て直した慶人君が、首を傾げる。
「それは手を繋ぐとか、そういうこと?」
「そうね…。 それよりもっと、身体をくっつけてイチャイチャする感じかな。 人前でイチャイチャしてるバカップルな感じ。」
またハードルの高いことを…と、氷をかき混ぜるスピードが上がる。私の考えていることが伝わったのか、一華ちゃんは携帯を差し出して、カップルのイチャイチャを描いた漫画を見せてきた。
「してみたくない?」
してみたくないわけではない。むしろしてみたい。
男性陣は?と同じ画面を見せられた二人も、同じようなことを思っているのだろう。言葉を濁していた。
「きっと慎司君も内心はこういうことがしたくてたまらないのかもしれないわよ。 後はきっかけよ!」
「いやでも、牧瀬がそんなことするかな…。」
漫画に描かれている女の子は、男の子とハグをしたままキスをしていたり、同じベッドで好きだと囁き合いながらごろごろしたりしていた。こういうことをしてみたいのは山々だが、慎司君がしてくれるとは到底思えない。
「静香、こんな風に可愛く甘えてみたらどう?」
「ええっ!? 無理だよそんなのっ、恥ずかしい…!」
「じゃあ僕で練習する?」
「もうっ! 慶人君、からかわないでっ!」
まずは手を繋ぐことからだと、一華ちゃんの案は無かったことにと話題を変える。
しかし、手を繋ぐどころかキスまでしてしまった水族館デートの晩。一華ちゃんの提案が、実行の現実味を帯びて私の前に現れたのだ。

