じぃ〜っとこちらを見る慎司君の視線に、いつもの、こちらを全てを見透かすような鋭さはない。少し恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに…。見ているこちらがくすぐったくなるような、そんな顔をしていて。私はごくりと唾を飲み込み、慎司君の言葉を待つ。
「俺も…」
手を握り返される。
「こういうこと、していい?」
慎司君が帽子をとったかと思ったら、すぐ目の前にその顔が迫った。帽子の陰でさらに暗くなる視界に映る全てが、スローモーションで映る。しかしそれは、目を瞑る間もなかったくらい、一瞬の出来事だった。
押し当てられた柔らかい唇が、名残惜しそうに離れていく。
自分が今何をされたのか。理解すればするほど、恥ずかしさが込み上げる。帽子で隠されていたとはいえ、こんなに人が沢山いる中でされたキスに、私の身体はぷるぷると震えた。
「………わ、たし…」
「ん?」
「まだ、何も、いいとか、言ってない…っ!!」
私の、真っ赤な顔でする、精一杯の照れ隠しと抗議に、慎司君はきょとんとした後、珍しくハハッと声に出して笑った。顔をくしゃりと歪ませて、それはそれは本当に嬉しそうに笑うから、私は本気で怒ることもできず。
「駄目だった?」
「………駄目じゃない。」
私はもう一度、慎司君のキスを受け入れた。
【作戦ファイルその3・慎司君にしてやられる】

