恋は揺らめぎの間に




やっ……てしまったあああああ〜!!

後悔はしていない。けれども、考えなしだったとは思う。なぜなら、ただでさえ口数の少ない慎司君の口数が、さらに減ってしまったのだ。

何であんなことしちゃったんだろう…!?
突然で驚いたのね?嫌だったのかな?調子に乗り過ぎた?

聞きたいことはあるけれど、答えを聞くのが恐ろしくて聞けずにいた。幸いまた手を繋いでくれたので安心はしたが、どこかギクシャクしてしまう。恥ずかし過ぎてお互い目を合わせられない状態が、お昼ご飯を挟んでも続いている。このままじゃいけないことは、お互いわかっていた。

デートをしにきたのに、こんな感じで終わらせたくない。



「ちょっと、話したい…です。」



そう私から誘って、水族館を出る前にまた、大水槽のところへ戻った。人が適度にいて、ソファもあって、薄暗くて。なんとなく、二人の足がここに向いた。



「話って…?」

「あの……」



なんて言えばいいか悩んでいると、繋いでいた手をぱっと離された。



「えっ? なんで…?」



驚いて、思わず慎司君に尋ねてしまう。すると慎司君も驚いたようにこちらを見た。



「嫌じゃ…ないのか?」

「え? 何が?」

「………手…。」



急に繋いだから、戸惑っているのではないか。嫌だったのではないか。だから、ぎこちないのではないかと慎司君は言った。しかしそれは、私の台詞である。私に急に抱きつかれて、戸惑っているのではないか。嫌だったのではないか。

私は思いっきり首を横に振った。



「嫌じゃない…! 嫌なわけないよ! 慎司君の方こそ嫌だったんじゃ…?」



恥ずかしくて、エレベーター内での出来事をもごもご喋る。



「突然あんなことしちゃって…私、本当にどうかしてた。 ごめんなさい…。」

「いや、アレはその……いいんだ。」

「いいって?」



許してくれるということだろうか?

慎司君は顔を隠すように、帽子のつばを下げる。



「……嬉しかったから。」

「え?」



嬉しかった……?



「じゃあ、あの後よそよそしかったのは、嫌いになったとかじゃない…?」



慎司君はこくっと頷く。そして、断言した。



「静香を嫌いに思うことはないから。」

「…じゃあ……」



今度は私から慎司君の手を取る。



「これからも、こういうこと、してもいい?」