始まった鰯の大群のショーを見ながら、色々考えてくれたみんなには悪いけれど、これはこれでいいかもと思っていると、慎司君の手の甲が、私の手の甲にトンと当たった。
偶然だろうと特に気にしていないと、するっと指先が絡め取られた。
「っ…!」
私の細い指先が開かれて、そこへ太くて角ばった指が通される。遠慮気味に、少しだけ力を込められて握られた手に、私の心臓は大きく跳ね上がった。
何で。どうして。どんな気持ちで…?
それを確認すべく、慎司君の顔をわざわざ仰ぎ見る必要はなかった。水槽に、目を横に反らしてはいるけれども、顔が赤くなった慎司君が映っていたからだ。
「…次、行く?」
けど、このまま?
私の心配が伝わったのだろうか。頷くと、手を繋いだまま慎司君は歩き始めた。
どうしよう…どうしよう…。
心臓がうるさい。ドキドキが止まらないばかりではない。世界がキラキラして、だけど慎司君以外、何も目に入らない。
ただ、手を繋いでいるだけなのに。ちゃんと付き合う前も、繋いだことのある手なのに。どうして…どうしてこんなに緊張するのか。どうしてこんなに、慎司君を感じでしまうのか。
比べるのは悪いけれど、慶人君の時とは全く違うことに驚く。
私はいつから…
いつからこんなに、慎司君のこと、好きだったんだろう…!
今すぐ慎司君に抱き着きたくなって、我慢することができなくて。混雑するエレベーターで、どさくさに紛れて私は、繋がれた手の方の腕に、ぎゅっとしがみついた。

