恋は揺らめぎの間に




キャアキャア子ども達の楽しそうな声が響く中、私達はずっと黙ったまま、プールを楽しそうに泳ぐイルカを眺めていた。

海から香る潮風が、額に滲む汗を乾かしてくれる。それでも、慎司君とぴったりとくっついてしまった身体からは汗が止まらない。原因はわかっている。暑いからじゃない。熱いのだ。慎司君と触れるところが、熱を持っているように。

ドッドッドッと心臓が激しく鼓動を刻んでいる。

この緊張がバレてはいないか。伝わっていないか。心配になる一方で、伝わってもいいのかもしれないと思う自分もいる。
好きだと口で伝えるよりも、バレてしまった方が、都合が良いかもしれない。付き合ってするようなことが、慎司君と出来るかもしれないから。



「静香は、暑くない?」

「え? あ…ちょっと熱いかな。」



気候のせいじゃないけれども、赤くなる顔を隠すにはちょうどよかった。パタパタと手で顔を仰げば、慎司君はカバンからペットボトルを取り出して渡してくれる。



「飲む?」

「ありがとう。」



いただきますと口をつけようとして、ハッとする。

ま、待って。これ、慎司君が買って飲んでいたものだから、私が飲んだら間接キスになるよね?



「あの、いいの…?」



何が?と言いたげにこちらを見た慎司君と目が合う。
慎司君は私が言わんとしたことがわかったようで、あっ…と呟いた。



「ごめん、新しいのを…っ」

「い、いいよこのままで!」



と、水を飲んでペットボトルを返す。ちらっと見た慎司君は顔が赤くなっていて、こちらも恥ずかしくなってきてしまった。

中学生でもないし、別にキスだって初めてしたわけでもない。それなのに、やけに慎司君の唇が目について困る。

慎司君とキスしたら……。
慎司君の唇は、どんな感触だろう……?


イルカショーが始まっても、隣の慎司君が気になって仕方がなかった。

付き合う前までは自然と近かった距離も、付き合ってからはお互い意識してしまって、開いてしまっていたから…
前まではなんとも思わなかったこの近さに、ずっとドキドキしっぱなしで。

その角ばった手だったり、触れてしまっている腕だったり、唇だったり…
斜め前に座ってずっとイチャイチャしているカップルのように、慎司君とイチャイチャしたら…なんて考えて、何も頭に入ってこなかった。


恋人繋ぎじゃなくてもいいから、手くらい、繋ぎたいな…。