恋は揺らめぎの間に




「水族館〜!!」



慎司君に優待券を見せて遊びに誘うと、二つ返事でOKしてくれた。しかもすぐに有休を取ってきてくれて、ちゃんと付き合い始めてから初めてのお出かけ…初デートが実現したのである。

家族以外の誰かと来る初めての水族館に、思わず飛び跳ねてしまう。その誰かが慎司君というのもまた嬉しかった。



「暑い…。」



帽子のつばを下げ、日増しに強くなる日差しに目を細める慎司君にドキリとする。

家にいる時はゆるっとした格好が多いのだが、今日はスキニーにTシャツとすっきりした格好をしている。先日、普段とは違う格好で誘惑しようと言っていた一華ちゃんのあの作戦は、本当に効果があるんだと、今身をもって実感してしまった。

私からの視線に気づいた慎司君が首を傾げる。



「静香?」

「は、早く中に入ろう! 中は涼しいはずだよ!」



休日の水族館は、家族連れを中心に人で溢れかえっていた。

多いなぁ…。

慎司君は背が高いので、はぐれることはないだろう。ただ、はぐれた場合私のことを慎司君が見つけ出せるかはわからない。なぜなら私は、見た目にも中身にも特筆すべき点がないからだ。

私、平凡だからなぁ…。

一華ちゃんのようにスタイル抜群でもなければ、慎司君のように整った顔もしていない。高橋君のようなコミュニケーション能力もなければ、慎司君のような運動神経はもっとない。
すれ違うカップルの女性達がまとうキラキラ感もないように思うのだ。

水槽に写る私達を見て、少し自信を失くす。

私、慎司君の彼女としてちゃんと見られてるかな…?
釣り合っているのかな…?

慶人君ほどではないにしても、慎司君も先程から女性達の視線を集めていたのだ。



「静香、先にイルカプール行こう。」

「え?」



まだ時間には早いけど…と時計を見る。



「混むから早めに行った方がいいって。」

「調べて来てくれたの?」

「職場の人がこの前ここに来たらしくて、色々教えてくれた。」



嶋さんだったりして…ね。

嶋さんと出かけているのを知って、嫉妬して、勢い余って告白した日。あの日以降、慎司君のお出かけの頻度は減った。気になって聞いてみたら、仕事のお付き合いで野球観戦等に行くことはあるが、嶋さんを含め女性がいる場に誘われたら断っているようなのだ。

しかし、完全に接触が絶たれたわけではない。

男性の割合がとても高い職場で、水族館の詳しい情報
を知っているのは誰かと考えると、先程まで楽しかった気分は一転して下降し始めた。



「どこに座る?」

「水のかからない…でも、前の方がいいな。 空いてる?」



ショーが始まるまで、まだ30分以上時間がある。けれども席は埋まり始めていた。



「前の方だと…。」



慎司君の視線の先を追っていく。前の方で空いている席は、2人だと少し厳しいかもしれないスペースしかなかった。あれでは身体をぴったりとくっつけなければ、座れないだろう。



「あそこでもいいなら…。」



いいよと答えた私をちらっと見た慎司君が、少し恥ずかしそうなのが救いだ。