恋は揺らめぎの間に




【作戦ファイルその1・恋人繋ぎをする】



「ただ握るだけでも喜ぶと思うから、恋人繋ぎなんかしたら絶っっ対喜ぶっすよ。 なーんにも考えずに、いつでもやっちゃってください!」
 


と、自信満々な高橋君を信じて、一番簡単そうなことから試してみることにした。

でも、いざしてみるとなると…
タイミングがかなり難しい。

帰宅してからご飯を食べてお風呂に入るまで、お互いノンストップだった。何度も機会を窺ってはいたけれども、なかなかそんな隙がないのだ。



「静香、どうした?」

「ふえっ!?」



お風呂上がりで頭にタオルを乗せたまま、リビングに戻ってきた慎司君が、ぼーっとテレビを見ながら考え事をしていた私の顔をのぞき込んだ。



「なんか、今日、上の空だから。」



そう言ってお茶を差し出し、隣に座る慎司君からは、お風呂上がりの良い匂いがした。

ちらっと横を見る。

半袖から覗く、細みだけれど逞しい筋肉のついた腕。水が滴る頬。ゴクゴクとお茶を飲む際に上下する喉仏。真っ直ぐにテレビを見る目。手を伸ばさなくても、触れられる位置につけられている手。

…繋ぎたい。
でも、繋ぎに行く勇気が出ない。

慶人君は何であんなナチュラルに繋げたんだろう…!?



「静香、テレビ見てる?」

「え? テレビ? あっ、変えていいよ。 野球見る?」



テレビはつけていたが、内容は何一つ覚えていない。
慎司君と手を繋ぐことを意識すればするほど、動きはぎこちなく、何もしないまま時間だけが流れていった。