慶人君は残りのアメリカンドッグを頬張り、飲み込むと、ゴミをまとめて立ち上がる。
「そんな様子だと、横から掻っ攫っちゃうからね。」
「かっ… え!?」
うーんと背伸びをする慶人君は、こちらを見ないままそう言った。ゆっくり長い腕が下ろされ、ふうと息をついて、ようやく私の顔を見る。さっきまでの調子の良い笑顔はそこにはなくて、私にすがるような…慶人君にはあまり似合わない、切ない表情をしていた。
「僕のこと、嫌いじゃないんだよね?」
嫌いなわけがない。
けれど、ここで好きだと言ってはいけないと思った。
無言のまま、見つめ返す。慶人君の瞳が少しだけ潤んでいるような気がした。
「高校の時から、僕はずっと静香ちゃんのことが好きだった。 再会して…恥ずかしいけど、運命だって思ったよ。」
私もずっと好きだった。
高校の頃… 慶人君の何もかもが好きだった。
「静香ちゃんも好きだったのに、キスだって…。 どうして僕は、 静香ちゃんと付き合えないんだろう。」
慶人君の声が、震えている。その手をとってあげたかったけれど、私にはもう、それもできない。してあげられない。
「私にとって慶人君は、今も、昔も、憧れなの。 憧れの、王子様。 少女漫画に出てくるような、キラキラしてて、かっこいい人。」
走馬灯のように、高校の頃の思い出が駆け巡る。
「王子様の隣にはいつもプリンセスがいるの。 王子様のことがどんなに好きでも、王子様はプリンセスのことが好きで、プリンセスを好きな王子様が、私は好きなの。 私の中の慶人君って、その王子様なんだよね。」
手の届かない、大好きな人。

