「ここにいたんだ。」
サービスエリアの展望台でのんびり景色を楽しんでいたところに、アメリカンドッグを片手に持った慶人君がやって来た。
地元まであと半分といったところだろうか。ずっと運転してくれている高橋君の疲れをとるために、休憩をとることにしたのだ。
「あれ? 高橋君は?」
一緒じゃなかった?と辺りを見渡すも姿はない。
「トイレ行くからって渡されてさ。」
「そうなんだ。」
慌てて走っていく姿が安易に想像できて、くすっと笑ってしまう。
隣に腰掛けた慶人君は、高橋君のものであろうアメリカンドッグをもぐもぐ食べ始めた。食べても大丈夫か聞いたが、いいのいいのと慶人君は笑う。
「静香ちゃんもどーぞ。」
「んぐ。」
慶人君にまだかじっていない部分を口にあてられ、思わず食べてしまう。
「美味しい…。 でも、こういうのはもう……」
しないでほしいと、もう一口と勧めてくる慶人君を制す。こういうことをされると、嫌でもドキドキしてしまう。そしてドキドキすると、罪悪感も募っていくからだ。
慎司君が私以外の女の人と、こんなことをしていたら絶対に嫌だ。ならば逆もまた然りではなかろうか。
信じて送り出してくれた慎司君を裏切るようなことはしたくない。
「それは、牧瀬君と付き合い始めたから? それとも、こういうことをすると、僕のことが気になるから?」
顔が真っ赤だよと囁かれ、慌てて顔を隠す。そんな私を見た慶人君は少し嬉しそうだ。顔を覆う手の隙間、おでこを狙ってちゅっと口づけられる。
「慶人君…!?」
「牧瀬君とこういうことは?」
………していない。手を繋いだりはするけれど、それ以上は何もしていない。
悲しいかな。ちゃんとお付き合いを始めたといっても、あまり変わらないのだ。変わったのは、少し距離が近づいて、過保護に拍車がかかったくらいだろうか。
「してないんだね。」
何も答えていないのに、私の反応から察した様子の慶人君がにこにこし始める。
「ここも?」
ふにっと唇に指を押し当てられる。
「…〜っ慶人君!!」
からかっているのだろうか。
恥ずかしくなって、慶人君の手を振り払い、流されるところだったと慌てて慶人君から距離をとる。慶人君は残念と、冗談なのか冗談ではないのかよくわからないことを言って笑っていた。

