実家へ帰る日。インターホンが鳴った。慶人君が迎えに来たようだ。高橋君からも到着を知らせるメッセージが来た。
「それじゃあ行ってくるね。」
まったり一緒にテレビを見ていた、今日は非番の慎司君も立ち上がり、後を追ってくる。
玄関扉を開ければ、今日もかっこいい慶人君が爽やかな笑顔でおはようと挨拶してくれた。
「今日も可愛いね。 それ、新しい服だよね?」
「あ、ありがとう…! 新しい服って、よくわかったね。」
「もちろん。 荷物はそれだけ?」
持つよ、と慶人君の手が伸びてくるよりも先に、慎司君がさっと荷物を持つ。といっても、長居する予定はなくリュックサック1つなので、私が持つと荷物は取り返した。
「はよーっす。」
階下で待つ高橋君が、私達に気づいて手を振った。
「あれ? 牧瀬も帰るの?」
「違う。」
「慎司君はお見送りに来てくれたんだよね?」
ナチュラルに繋がれた手に、少しだけ力が入る。ん、と頷く慎司君は何だか嬉しそうだ。
「静香、後ろ?」
「そそ。 慶人は前な。」
慶人君はえー!と言いながらも助手席へ座る。慎司君は車に乗り込むその時まで手を離してくれなかった。
たった二、三日の帰省なのに、あまりに切なそうな表情に出発しづらくなってしまう。
「そろそろいいっすかね、彼氏さん。」
高橋君に茶化されて、顔を赤らめる慎司君がようやく車から離れた。窓を開けて、私は小さく手を振る。
「お仕事頑張ってね。」
「ん。」
ちらっと慎司君が、前に座る慶人君を見た。一人で帰らせるよりはと今回一緒に帰省することを許してくれた慎司君だが、とはいえ気がかりなのだろう。何を言うのかヒヤヒヤしていたが、
「静香のこと、お願いします。」
凄く彼氏感のある言葉に恥ずかしくなって、顔を覆い隠す。運転席の高橋君が楽しそうに口笛を吹いた。
「…了解。」
慶人君の返事を皮切りに、車は走り出す。
慶人君がミラー越しにこちらを見ているとはつゆ知らず、私はドキドキしっぱなしの頭で慎司君のことばかり考えていた。

