恋は揺らめぎの間に




「静香…っ。」



扉を開けてまず目に入ったのは、慎司君の安堵した顔だった。

好きだなぁ…。

電話を盗み聞きしたこと。嶋さんと一緒にいたことを責めるような言い方をしてしまったこと。嶋さんに限らず誰とでも、慎司君は好きな人と好きな時に好きなだけ、一緒に過ごして構わないこと。
話さないといけないことはたくさんあるはずなのに、言葉よりも先に身体が動く。

ぎゅっと、慎司君の服を掴んだ。
驚く慎司君を余所に、私はぴたりと身を寄せる。

もう1年以上一緒にいるのに。急にこんなことを言ったら、慎司君はどう思うだろうか。信じてくれるだろうか。今更と呆れるだろうか。

返ってくる反応がどんなものか、想像するだけで恐ろしいが、私はそれよりも恐ろしいことを知っている。言わずに後悔する方が、もっと恐ろしいから…



「…好き。」



私は慶人君を忘れるために慎司君といるわけではない。最初はそうだったかもしれないが、今は違うと断言できる。
いつも私の傍にいて、優しく見守ってくれていた人。私の駄目なところを含めて、優しく包んでくれていた人。私は今もこれからも、そんな慎司君と一緒にいたいのだ。

慶人君のことは確かに好きだ。今尚ときめくこともある。けれど、慶人君の横には別の女性を描けても、慎司君の横には描けない。そんなこと許せないくらい、好きの大きさが違うから。



「本当は他の人や嶋さんと一緒に遊びに行ってほしくないって… そんなこと思っちゃうくらいに私、慎司君が好きみたいなの。」



今更そんなことに気づいて。こんなことを言って…。困らせるだろうか。嫌になるだろうか。でも、それでも、私と一緒にいてくれないだろうか。



「慎司君好き。 好きです。」



話したいことは全部どこかへ飛んでいってしまって、ただ好きが溢れた。