カリカリと、ノートの上をシャーペンが滑る。この心地よい音は、隣の慶人君から聞こえるものだった。
相変わらず、綺麗な字…。
持っている手まで綺麗だと、少し慶人君を意識してしまって、身体の右半身に緊張が走った。集中しないとと思えば思うほど意識してしまって、先ほどまでは感じなかった慶人君のいい香りまでしてきてしまった。
思わずちらっと見てしまう。
真剣に前を見つめる慶人君。こんな風に並んで授業を受ける日が来るなんて、思いもしなかった。
慶人君の手が止まり、すっと私のノートへと伸びてきた。
《GWは何してる?》
驚いて慶人君を見ると、慶人君もこちらを見ていて、ふっと笑った。口パクで、返事を催促される。
《実家に帰る予定だよ》
秘密のやりとりに恥ずかしくなって俯く。
《牧瀬君も一緒?》
《一緒じゃないよ》
慎司君は仕事があるから帰らない。そもそも慎司君の家は引き払ってしまってもうないらしい。慎司君の家は母子家庭で、お母さんは先日ご実家へ引っ越してしまったとか。
そもそも今回の帰省の目的は、二十歳の集いに着る振袖を選びに行くこと。用事が済めば私もバイトがあるので、すぐ戻って来る予定だ。
《僕と一緒に帰らない?》
え?
《健が車で帰るって
一緒に同乗させてもらう予定 どう?》
慶人君からはよくご飯や遊びの誘いがあった。しかし、二人きりで会うのは断り続けている。
でも、高橋君が一緒なら……。
《日程確認するね》
二人きりじゃなければ、大丈夫よね?

