「春なのに、暗いなぁ。」
一華ちゃんはうーんと背伸びをする。
「色々考えてるみたいだけど、私に言わせてみれば、もう答えは出てるように思うけれど。」
そわな馬鹿な。春休みの間、頭が痛くてよく眠れなくなるほど、私は悩んでいたというのに。
一華ちゃんはニコッと優しく笑う。いつもの面白そうなことを探す笑みじゃなくて、本当に私のことを思ってくれているような、優しい笑みだった。
「だってさ、さっきから静香、慎司君にどう思われるかばかり気にしてない?」
「え?」
「静香が欲しいのはさ、慶人君からの好きじゃなくて、慎司君からの好きじゃない?」
…そうだ。私は、慎司君に好きって言ってほしくて、慶人君の告白を断ったんだ。
慎司君に寄せているのがただの情なら、慶人君に寄せているのが本当に恋心なら、慎司君の好きを聞くためにあんなことはしないだろう。
そんなことに、人から言われて気づくなんて、とことん自分には呆れてしまう。
「私が慎司君に抱いているのは、情じゃない…? 慶人君にドキドキするのは……」
「そりゃ、ずっと好きだった初恋の人に言い寄られたら、誰だってドキドキするでしょ。」
しかも相手はあの慶人君だし、と一華ちゃんは笑う。
「でも、嫌われたくないのは? 好かれたいのは誰なの? 好きでいてほしい人は? 一緒にいたい人は?」
「私が好きなのは……」
今、好きな人は………。
お弁当箱に、一枚の花弁が舞い落ちた。慎司君も今頃食べているだろう、甘い卵焼きの上に。
「答え、出た?」
ずっとモヤモヤしていた心が、すっと晴れ渡った気がした。
「一華ちゃんどうしよう…!」
「ん?」
「今、凄く、慎司君に会いたい…!!」
一華ちゃんと私は、キャーッ!と声を上げながら抱き合った。

