「静香ちゃん、今日久しぶりに、一緒にお昼食べようよ。」
「え?」
「また後で連絡するね。 よかったら、一華ちゃんも一緒に食べよう。」
同じサークルの人に呼ばれ、返事を聞く前に手を振り走り去って行く慶人君。それに続いて、慶人君と一緒にいた人達も行ってしまう中、
「ねぇ、ちょっと。」
赤羽先輩が話しかけてきた。
「知り合い?」
こそっと一華ちゃんが耳打ちするのに、首を横に振る。知ってはいるが、これまでちゃんと話したことはなかった。
「あなた、なんで慶人と付き合わないの?」
「え?」
「だから、なんで慶人と付き合わないのかって聞いてるの。 告白されたんでしょ?」
なんでと言われても…。
一華ちゃんと顔を見合わせる。
「それ、アナタに関係あります?」
一華ちゃんが間に入って答える。
「あるから聞いてるの。」
初対面の年上相手に立ち向かう一華ちゃんも凄いが、一歩も引かない先輩も先輩で凄い。そしてなにより、美人同士が睨み合う姿が凄い。
赤羽先輩の鋭い視線がこちらに向けられる。
「付き合わない理由は、慶人君には伝えています。」
「あくまで私には言わないってことね。」
赤羽先輩は毛先まで綺麗にくるりとカールさせた髪を後ろにおくりながら答える。
「いいわ。 だったら邪魔しないでね。 慶人君を好きな人はたくさんいるのよ。」
カツカツとヒールを響かせ、隣を通り過ぎる彼女もきっとその一人なのだろう。
一華ちゃんは何なのよー!と怒っていたが、先輩の言わんとすることがわからないわけではない。慶人君には何も言わないよう、一華ちゃんには言った。

