「花江さんに避けられてる? そりゃ仕方ないだろ…。」
今日のお礼にと奢ってくれた肉まんに、がぶりと齧り付く。
…駄目だ。牧瀬の話を聞いてたら、段々とイライラしてきてしまった。
やっぱりこのまま一緒にいるのはよくないと思った。それは良しとしよう。本当はこのまま花江さんといたい気持ちを抑えて、花江さんのために、花江さんを手放そうと思ったことは、尊敬に値すると思う。
けれど、問題はその覚悟が足りなかったことだ。
なぜ、離れようとして、これで最後にしようとして、思い出づくりのために計画した旅行で、これからも一緒にいると約束してしまったのか。百歩譲ってそれならそれで、なぜ肝心の、一緒にいる形を話していないのか。
自分達の関係がどうかもわからなければ、接し方に戸惑うのも仕方がないだろうに。
…俺は一体、寒空の下で何を聞かされているんだ。
「花江さん、慶人の告白断って、お前と一緒にいるって言ってくれたんだろ?」
「情だろう…それは。」
「情でいいじゃん! 好都合だろう?」
牧瀬は顔を顰めたままでいる。
わかる。牧瀬が言いたいことは。牧瀬は真っ直ぐな奴だから、きっと、はっきりとした好きが欲しいのだろう。それはきっと、花江さんも同じな気がした。

