「…何、お前。 暗い。」
数日後。夜の公園で落ち合ったランニング途中だという牧瀬は、会うなり嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「誰のせいでこうなってると思ってるんだよ〜!」
同じ男なのに、同じ部活で鍛えた仲なのに、なぜか一人にょきにょきと成長し、筋肉も立派な細マッチョに成長した腐れ縁野郎を殴ろうとして、止められた。
頭にはてなマークをずらりと並べる牧瀬。頭だけは俺の方がいいのが、唯一の救いだ。
「で、何の用だよ! 話って!」
牧瀬は黙って俯く。花江さん絡みなのはわかっている。それくらいでしか、奴は俺に連絡をしてこないからだ。
「静香と、なんか、気まずくて。」
「は?」
「どうしたら、いいと思う?」
知るかーーーーー!!!!
と、心の中の俺が叫ぶ。が、現実には喉から出そうになったそれを唾と一緒に飲み込んだ。
一見くだらないが、牧瀬は真面目な奴だ。俺に相談してくるのは、本当にどうしようもなく悩んでいる時なのだ。そして、口数が少なくぶっきらぼうで、誤解を招きやすいコイツが、友人といえば野球繋がりの人間しかコイツの相談相手が、自分くらいしかいないのも知っている。
「…何があったんだよ。」
他人にはわかりづらいだろうが、俺の一言に、とても嬉しそうに微笑んだ牧瀬に、罪悪感を覚えた。
つい数日前に、慶人が花江さんを諦めておらず、虎視眈々と、付き合う機会を狙っていると知っていたからだ。

