熱があるせいか。慎司君の瞳はいつも以上に熱を帯びて、潤んでいる。それに吸い寄せられるように、私は椅子を降りてベッドの脇に座り込んだ。

何も言われていないけれど、何故か慎司君に呼ばれているような気がした。

両手でぎゅっと慎司君の手を握る。すると、起き上がった慎司君が覆いかぶさるように、抱き締めてきた。旅行以来の近さだった。

きゅうっと胸が締めつけられる。だけどそれは嫌いじゃない痛みだった。本来なら寝なさいと怒らなければならない場面だろう。だけど私は、その背中に手を回してしまった。

離れたくなかった。不謹慎だけど、このままでいたかった。慎司君は風邪を引いてキツいのはわかっているのに、こみ上げてくる気持ちに歯止めがきかなくなってきていた。



「静香…。」



耳元で囁かれた、まるで私を切望しているかのように絞り出された声に、心臓が大きくドクッと動いた。血の巡りが一気に良くなるのに、頭はぼーっとして、何も考えられなくなっていくのがわかる。
するとどうだろう。何も考えられない頭には、好きという言葉が溢れかえっていった。

ああ…
やっぱり私、慎司君のこと、好きなんだ…。