好きを教えて、生意気なきみ

「渚、こっち!」



渚を連れて、2階のあたしの部屋に行く。



隣は風里の部屋だけど、今日は塾でいない。



「うわ…すげえ部屋」



あたしの部屋を見た渚が言った。



「なにが?」

「なんか…フリフリ」



そうかな…。



あたしは見慣れた自分の部屋を改めて見回す。



レースのカーテンに、小学生のときの誕生日プレゼントに買ってもらった天蓋付きのお姫様ベッド。レーヨン素材のピンクのシーツと花柄のテーブルクロス。



確かにちょっとフリフリかも…。



「まあいいから、座って」



居心地の悪そうな渚の腕をくいっと引いて渚を床に座らせた。



それからリボンの形のクッションを渚に渡す。



渚は物珍しそうにあたしの部屋を眺めてる。



そして、ある物に目が留まった。



「わー!」



それは、枕元に置いた、幼稚園時代のあたしが弥玖のほっぺにチューしてる写真…。



景色になりすぎてて存在忘れてた…。



あたしは慌てて写真を後ろ手に隠す。



「ふーん、そんなもんまだ飾ってんだ」



渚が立ち上がってあたしににじりよった。



や、やばい…。



あたしは後ずさり。



ベッドで足が止まって、そのままベッドに腰を掛ける体制になったあたし。



渚があたしの腰の横に手を置いた。



こ、この状況はまずいんじゃ…?



ドキドキしてる心臓と、湯気でも出そうな顔。



「俺に嫉妬させるためにわざと置いたわけ?」

「ち、ちがうよっ…」



渚はちょっとにやにやしてる。



あたしを追い詰めて楽しんでるんだ!



そのとき、1階から「あたしちょっと買い物出てくるねー!」というお母さんの声がした。



お母さん! この状況で行っちゃうの!?



この家で2人きり?



あたしこのままだと食べられちゃう!?



恥ずかしいような、期待しちゃうような…。



どうしよう!