好きを教えて、生意気なきみ

「じゃあ…2回目の失恋? にかんぱーい」



そう言って一方的に渚に乾杯する。



ぐびぐびと飲み始めたそれは、苦いビール。



「おいしくない…」

「おいしくねえな…」



なんて言いながらも2人でずっと一緒に飲んでた。



「弥玖の彼女…かわいかったな…」

「…そう」

「あーあ、あたしなんて全然眼中にないんだよなー」



あたしはそう言って、近くのブランコに乗って漕ぎ出した。



うえ、ちょっと乗ったらアルコールのせいか気持ち悪いや…。



ブランコを止めて、渚の方を見た。



渚があたしの隣にやってくる。



「…まだ好きなのか?」

「どうかな…。執着なだけかもね」



正直、彼女を見て動揺はしたけどショックは受けなかった。



美少女なのを見て、なんだか納得もした。



なんとなく今傷ついた気持ちでいる気がするのは、多分10年以上も弥玖の影を追って来たあたしの気持ちの整理がついていないからだ。



ショックを受けていない自分になんだかショックで…。



あたしはぐびぐびとお酒を飲み続ける。



2人で最後の缶を開けたころには、あたしはもう泥酔状態だった。



辺りもいつの間にか暗くなってる。



「渚~」

「あ~?」

「んふふ~」



そう言って渚にぐにゃっと笑顔を向ける。



それから渚の頭を乱暴に撫でた。



「いてえな、何すんだよ」

「渚はほんとーに生意気だね~」



そのまま渚の頭を撫で続けていたら、渚に腕をつかまれてしまった。



2人の間に、10月の涼しい空気が流れた。



なんだか渚の顔がすごく綺麗に見えて…。



あたしのものにしたいなんて思ってしまった。



そのまま、渚のブランコをあたしに引き寄せ、吸い込まれるように…



渚にキスした。