正直、黒髪さんはこのままずーっと静観を続けるのだとばかり思っていたから、驚いた。

黒髪さんのひと言だけで、先ほどまでわたしの席を取り囲んでいた彼らは、すっかり勢いを失って縮こまる。


「えっと、すんませんっした…………」


これはこれで反応に困る。

だって、ほぼ初対面だから、どのような返答が無難かわからない。

大丈夫だよと笑えばいいのか、茶化せばいいのか。

返答を誤れば、もしかしたら喧嘩ルートまっしぐらかもしれない。


「いえ、質問さえ取り下げていただければ……」


などと、なぜかわたしまでしどろもどろに話すハメになった。

彼らは首を上下にぶんぶん振り、そそくさと散っていく。

それはもう、なにか恐ろしいものでも見たのかと問いたくなるくらいの反応だった。


人口密度がいくらかマシになったところで、わたしは黒髪さんに向き直った。

「助かりました、ありがとうございます」