桜の花びらがひらひらと舞い落ちて、卒業証書の上に乗る。
 卒業式に桜が舞うなんて、とてもロマンチックで美しい。

 「由薇、悪い、待った?」

 「遅いよ、俊! ほら、寄って寄って。はい、チーズ」

 桜の木をバックにツーショットを撮って、私たちは共に歩き出す。

 「今日でトップも終わりだね。お疲れさま」

 「サンキュー。楽しかったな」

 「うん、すごく楽しかった。覚えてる? 私が転校してすぐ、俊に喧嘩売られたの」

 「あぁー……まぁ」

 「ふふっ、今となっては思い出だよね。大学は蒼空もかなでも、杏ちゃんも一緒だしまた楽しくなる予感がするなぁ」

 「坂本もいて、良かったな」

 私は頷く。
 転校する前、高校は平凡だった。県立だったし、この学園みたいにトップコンテストなんてものはなかった。
 このまま華の高校生活は平凡に終わってしまうんだろうなぁと退屈していたとき、お父さんの転勤の都合で転校になったんだっけ。
 寂しかったけど、今は東院に転校してきて良かったと思っている。

 「なぁ、由薇」

 「ん?」

 「この学園のこと、愛することができたか?」

 そんなの、私の答えはひとつしかない。

 「ーー心から、東院学園を愛することができたよ」

 ヤンキーを名乗る、蒼空やかなでという二人に出会って。
 親友と呼べるほど仲良くなった杏ちゃんに出会えて。
 なんだかんだ言って、大好きな俊に出逢えて。
 私はそんな出会いを与えてくれた、この東院学園が好き。

 「由薇ちゃん、俊!」

 「クラスのみんな、もう揃ってる」

 「二人とも、クラスの打ち上げ一緒に行こー!」

 「はーい! 行こ、俊」

 「だな」

 私たちはそっと手を繋ぐ。
 この先も私の中で、あなたはずっとトップという存在なのだと思う。
 ヤンキーを名乗るあなたの隣を歩きながら、恋という素敵なものをもっと知れますように。