気まぐれヤンキーくんのあまのじゃくな溺愛。

「喧嘩じゃない…」
「そ。昨日みたいに金とかで脅すマジでやばい奴もあるけど大抵は勝負したくてしてるだけだからそんな心配しなくていい」

「勝手にやらせな」と眠たそうにまた淡々と最後に言った鳳君。
そうだったんだ…。
私てっきり喧嘩って、相手の何かに気に障って頭に来たから殴り合い、なんだと思ってた。
何だ、早とちりか…。
…ん?
もしかして、今日ずっと私を睨むように見てきたのって、私が面倒事に突っ込まないために…?
鳳君、今日も眠たそうでこういう日は早く帰るはずなのに、まだいるってことは…そういうことだよね……?
そう思い、真後ろから私を見下ろしてあくびをする鳳君の方に振り向く。

「鳳君!」
「…何」
「ありがとう!」
「……は?」
「こんなこと言ったら不良の人達に悪いかもしれないけど、私が目をつけられないために止めてくれたんだよね?」
「は!?何言ってっ…、…うざっ」

目を見開いた後、口悪くして私から視線を外した鳳君。
私の言葉に嫌気を差したのかもと思って顔色を伺ったけど、耳がほんのり赤くなっていたのが目に映って、
心温まりながら鳳君にバレないように小さく微笑んだ。
ふふっ、照れてるのかな…?
鳳君、昨日はあんな口が悪かったのに、こんな可愛い所もあるんだぁ。
そしてその後、萌恵ちゃんに帰りが遅くて心配されたことは言うまでもない────。