【番外編】冷徹な総長様がただの幹部(私)を溺愛してくる

豹牙さんはただ俺をからかっただけらしい。


「とにかく、もう撫でなくていいんで」


そう告げると、豹牙さんは「そうか」と頷き、すれ違い様に肩に軽く手を置いた。

ぽん、と労いように。
「わかった」と。

その重みをよく覚えている。

ふいに泣きそうになったのだ。


俺は、豹牙さんに認められたかったのだと思う。

ひとりの人として。そしてライバルとして。


この頃にはもう冴妃のことが好きだと自覚していて、それと同時に豹牙さんも冴妃のことが好きだと悟っていた。
自覚の有無は知らないが、明らかに冴妃を異性としても好いている。

絶対に敵わないと思った。

そしてそれでいいとも思っている。

だってふたりは誰がどう見たって両思いだから。


ふたりがふたりのまま幸せになればいい。

要らないものは全部捨てて、自分たちの道を進む姿をこの目に焼き付けたい。

誰にも嫉妬なんか抱かせないほど、強く。