【番外編】冷徹な総長様がただの幹部(私)を溺愛してくる

「・・・その鞄を投げてか」

「はい。ちょうど辞書入れてたんでいい武器になってくれました」


──は?辞書?

何言ってんだこいつは、と驚くのと男が「そうか」と普通に受け入れていたのはほとんど同時だった。


いやいやいやなんで普通に受け入れられんだ。どう考えてもおかしいだろ。

そんな鈍器みたいなもん平気で人に投げつけるとか正気じゃない。

ああでもアイツらもアイツらでイカれてるしお互い様なのか・・・。


ここではたと、自身がそんな彼女に助けられたことに気づいた。


もしあのまま殴り合いになっていれば、俺は確実に負けていた。

多少護身術の心得があるとはいえ、多対一で勝てるほど強くはないから。

自身の情けなさを痛感させられ思わず拳を強く握りしめると、上から声が降ってきた。


「そこのお前」


顔を上げると例の男が俺の目の前まで来ていた。
彼女はその半歩後ろに控えている。