俺は店員の女性に心の中でお礼を伝え、彼女と二人でお店の外に出る。
まだ、夜の街はあちこち光が灯っていて、人々の喧騒も落ち着いていない。
「あの私、先輩のことが……」
「ごめん、待って」
彼女は決死の顔をして俺に伝えようとするが手を前にだして彼女の言葉を無理やり遮る。
みると、明らかに顔に血の気がない。目を瞑り、顔が徐々に項垂れいくのが見えた。
「違うんだ。宗方さん……いや……璃子さん、俺から言わして欲しいんだ」
そう言うと、俯きかけていた彼女の動きが止まった。
「宗方璃子さん──俺はあなたのことが好きです」
言葉を続ける。
「今度、一緒にあのアニメの映画を観に行きませんか?」
璃子さんは顔をあげると大粒の涙を拭おうともせずに俺に返事をする。
「はい、喜んでっ」
小雨が降り頻る中、涙なのか雨露なのかわからない互いにぐしゃぐしゃになった顔で見つめ合いながら、彼女は俺が出した手をそっと取ってくれた……。



