翠くんは今日もつれない【完】

その日は、雨が降っていた。ザアザアと降り注ぐ大粒の雨の中、あの人は傘を差さずに公園のベンチにひとり、ぽつんと座っていて。



「───何、してんの。」



放っておけば、今にも消えてしまいそうな儚げなその姿に、気づけば声を掛けていた。

近寄んなって言ったのは、自分自身なのに。



「翠、くん、、なんで、?」



傘を傾けて差し出すと、羽依さんは顔を上げて驚いたように目を丸くする。雨に濡れているせいで、白いシャツから肌が透けて見えて、かなり目に毒だった。あまりにも無防備過ぎる。

この人を最初に見つけたのが俺でよかった。



「それはこっちのセリフなんだけど。ずぶ濡れで何してるの。風邪引くでしょ。馬鹿なの、あんた。」



彼女の理解不能な行動に腹が立って、キツい言い回しになる。また嫌われるな、これ。だけど、俺はどう思われてもいいから、羽依さんにはもっとちゃんと自分のことを大事にして欲しかった。