「だいじょーぶ、へへ」




わたしに背中を向けて、抱き止められている茉耶がどんな表情をしているかわからないけれど、声色はすきなひとに甘えるような糖度の高いものだった。



茉耶の背中に軽く手を回しながらわたしと目を合わせる直は心配そうな顔をしていて、誰にでも分け隔てなく与えるそのやさしさに嫌気がさす。



いいことなのに、それは直の長所なのに、わたし以外にやさしくしないで、ふれないで、って。


また募る、積もる、広がる、黒く染まっていく、もやもやと、いやな感情。