いつも意思に反して、直を見かけるとその名前が唇から音となって飛び出して逃げ出ていってしまう。

あわてて、何も言ってません呟いてません的ポーカーフェイスを取り繕う。




「ん、? なんか言った?」

「……あ、や、なにも、」




俯いていた茉耶が顔を上げてしまって、まずいと口を結ぶけれどもう遅い。

わたしも茉耶も直も、三者、お互いの存在を確実に認識した。わたしの声、聞き取れていなかったら良いのだけど。



夜道であっても、街灯も星の煌めきもわたしたちを照らすから、一度認識してしまえば目は慣れてしまって存在を消せなくなる。




「あれ〜……なおくん!」


「あ、待って茉耶」