低温を綴じて、なおさないで



人当たりが良さそうで可愛らしく、しゃぼん玉が弾けたような明るさときらめいた声の持ち主が、それ以外に手に取っていた本の貸出処理を終えた。



振り返って、わたしが並んでいたことに気がつくと「わ、お待たせしました〜」とふわり微笑んで会釈をしてこの場を後にしていった。



すごく女の子らしくて、目が合ったのは一瞬だったのに、微笑んだその表情は花が綻んだように希望的でまっすぐで可愛かった。




──たぶん、気のせいだけれど。


それでも、どこか見たことがあるような気がしたのは、つい最近黒髪ショートボブの女の子を思い出していたからだろうか。




あの子のためにも里見先生の新作、はやく返さなきゃ。


そのためには、はやく直にも読んでもらわないといけない。



あの子も艶めく黒髪に、顎下のボブだった。

わたしになんでも似合うと言ったあいつは、今の子を見たら黒髪ショートがいいよ、と伝えるんじゃないかって考えてしまうくらいには似合っていた。






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