低温を綴じて、なおさないで





ここから、受付の奥の棚に、頼んでおいたお目当ての本が見える。



恋愛もミステリーもどんなジャンルも綺麗で儚い描写が特徴の、里見りさ先生の最新作。青い空と白っぽい海の薄い装丁に心が浮ついていた、そのときだった。



前のひとの声がすっと耳に落ちた。




「あの奥の棚にある本って、まだ借りれたり、しないですか?」


「あ〜〜ごめんなさいね。あれは取り寄せたひとが借りて、返却してからになるのよ。またいらして」


「そうなんですね!わかりましたぁ〜、ありがとうございます」