直にとってはほんの冗談かもしれないけれど、わたしはいちいちきみの一言一句に一喜一憂してしまうのだから。
ばか、と弱く二の腕にパンチしておいた。
「そろそろ図書館に里見先生のお取り寄せ届くけど貸してあげない」
「ごめんって。坊主は冗談にしても、本当に栞はなんでも似合うって思ってるから」
「……調子良すぎ」
わたしと違って直は嘘をつかない。誤魔化したりもしない。
たぶん本心から言っているその言葉に照れてしまった表情と声色をきちんとうまく隠せているだろうか。
小さく控えめに目尻を下げて笑う直との関係は、このままの距離で続いていけばいい。……できるならば、茉耶に限らず他の誰のものにもならないで、ほしい。
最初から最後まで、わたしの性格のわるさを咎めるような風がつめたくて刺々しかった。
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