「文学部なのに金融経営学って不思議だよな。俺、必修じゃなかったら絶対取りたくない講義」
「そんな面倒なの?」
「教授が鬼単常習犯」
ということはあれだ。普通の学生がシラバスと初回で脱落するようなめんどくさい講義を、茉耶は直パワーだけで取っているわけだ。確かにあわあわしてたところを、って言ってた。
茉耶にとってそんな出会い、運命と捉えてもおかしくないかもしれない。
……なんだか余計に、黒が増した。鬼教授の講義、頼れるのは直しかいない状況で、茉耶がすきを積もらせていくのが容易に想像できた。
……いやだ。
言えずに心のなかに、また滞留するから、わたしにまとわりつくぐるぐるな感情に取り込まれてまた大きくなっていく。
びゅん、と一瞬つよく吹いた風がわたしを責めているようだった。長く伸びた髪が、風に揺られたから耳にかけてかき集めた。



