茉耶のことを話しはじめたのは直のほうだった。


“あの子”と指すから、まだそこまで仲は良くなっていないなと想像して、勝手に安心する。



これまでの歴代彼女はわたしの知らないひとばかりで、わたしもしっかり関わりのある彼女候補は今回がはじめて。


それもあってすごく自分ごとに思えるし、近いからこそ、ぬかるんで溶けた感情が押し寄せる。月が雲に隠れてしまったときのような、くらい感情。




「でも茉耶には言わなかった。…………申し訳ないなと思って」


「あー……なるほどね、理解」