毎年秋になると、空が綺麗だと月並みなことを考える。


今日は月が一段と大きく見えて、住宅街の街灯の少なさも月あかりでカバーされている気がする。



雲ひとつない秋の夜空は、たまにベランダからぼーっと眺めてしまうくらい落ち着くし、心があらわれる気がするのだ。


半袖にカーディガンを羽織ってちょうどいい気温が、ぬるくて過ごしやすい。




進学を機に訪れた東京は、もっと寂しくてつめたいものだと思っていた。

中心部でなければ人工的な灯りは平凡な数だし、きちんと星が眩く存在を主張してくれる。




なにより、近くに世界中のどんなひとよりあたたかい存在がいてくれるおかげかもしれない。


あたたかいそのひとと日常を共有しあういつもの公園の横を通って、そんなことを思った。



わたしがいなければ、そのひともいない。ちらりと視線を公園のブランコに移してみたけれど、やっぱりいなかった。