ゆらゆらと人の流れを観測しながら、返信がわたしのもとへ訪れてくれないから移動するにもできない。音もバイブも鳴らない、画面に何も表示されない。



数日前はまだまだ暑くて半袖を着ることだってあったのに、夜風はもうこんなにもつめたくて責められているきぶんになる。



手先が冷えて、息を吹きかけてみるけれど、まだ息は白くならない。



あした、新しいコートを見に行こうかな。今年はブラウンのロングコートが欲しいな、とさっき視界の端に映ったお姉さんを思い出しながら考えた。



淡いブラウンと冬の予定と手持ちの洋服に思いを馳せていれば、握りしめていた電子機器が待ち侘びた電子音を伝えた。




『もう少し、かかる』