わたしが声をかけると、“はじめまして”と柔らかく笑った。わたしとは違って、やはり記憶にはないだろうな、と感じられる距離。


それなのに妙な親近感があって心地良かった。



その日、はじめて会った日はおしゃれなイタリアンレストランを予約してくれていた。ひとつしか変わらないのに、余裕感と涼しさが共存して滲んでいた。


チョイスはこれ以上ないくらい完璧で、料理の美味しさ、お店の雰囲気の良さはもちろん、なにより楽しいなっていちばんに感じた。



地元が同じだからなのか、葉月くんのコミュニケーション能力が高いからなのか、話が弾んで盛り上がって、無邪気だったあのころにタイムスリップしたみたいだった。



話を振ってくれるし、聞いてくれるし、葉月くんがしてくれる話はぜんぶ面白かった。心地良いトーンで流れていく時間があっという間で。