頬杖をついて羨ましいとでも言わんばかりの眼差しを向けてくる碧。こいつもこいつで中学のときから一途に付き合い続けている彼女がいるからよく言うよ。


それに俺と碧の決定的な違いは、ちゃんと“好きな子”に好意を向けられていることだ。よっぽど俺のほうが、碧が羨ましくて仕方ない。



教室のざわめきの中、拾った碧の声色はいつも通り低く、近くにいる俺しか認識できないだろう。




「それでいて古賀ちゃんキープし続けて、罪な男だよまったく」




やれやれ、と言いたげな表情を大袈裟に作って俺に投げ込んだ。



中学から同じ碧は当然に栞の存在も知っている。そして自分から言わずとも、俺が心の奥底に仕舞い込んだはずの気持ちは簡単に見抜かれてしまった。



たぶん、栞も他の同級生も気づいていない。俺が本当に想ってるのは誰か、知っているのは碧だけだ。




「キープじゃねーよ。栞は幼なじみ」


「幼なじみとか言って。彼女全員、古賀ちゃんの髪型にさせてるくせに」


「タイプ聞かれるから栞の特徴伝えてるだけだよ。そしたらみんなしてくれんの」