「お!モテ大魔王!」
「なんだよそれ」
まだ制服を着て学校に通っていた頃のとある日。照りつける太陽から逃げるように、呼び出された中庭から教室へ戻れば、ひらり手をゆらめかせながら揶揄うような声が飛んできて、苦い笑みを乗せた。
ちょうどそのときは“彼女”の枠が埋まっていた。結局今回も好きにはなれなかった。一応、彼女となった子たちを好きになる努力はしている。
声をかけてきた友人、碧が座る窓際一番後ろへ足を進める。
「彼女いるってわかってんのにたくましーよな」
「あー……また彼女のこと好きになれなかったの知られてた」
「はあ。お前もお前で大概だよな。それでも彼女途切れねーの、やっぱイケメンって正義だわ」



