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恋人、という単語を辞書で引くと表現の違いはあれ「恋しく思う相手」「相思相愛」と綴られている。


名ばかりの恋人が途絶えることはなくとも、本質的に“恋人”という存在ができることはないだろうとどこか、諦めていた。




「ごめんね。俺、彼女がいるから」


「で、でも、南雲先輩、彼女さんのこと好きじゃないって噂で……」


「……仮にその噂が本当でも、君のことも好きにはならないよ」


「……っ」




真実は、時に残酷だ。


家族とも、友達とも違う。それでもきっといちばんに気を遣って、いちばん大切にしなければならない存在なのだと思う。



そんな彼女という枠に誰かがいても、多分俺がその存在を本気で好きになることはない。俺の中でのいちばんは昔からずっと、不変なのだから。