……どれだけ時間が経っただろう。少なくともまだ、カーテンの隙間からひかりは取り入れられていない。
ぐったりとふたり沈む、わたしのシングルベッド。ふたりじゃ狭いのに、直とより近くにいてきみの低温を感じられるなら都合が良い。
寒いから布団を奪い合ってもおかしくないのに、いつも通り直はわたしのほうに多くくれる。もともと低体温なきみの身体が冷えてしまうから、わたしの体温を合わせる。
自身の腕にわたしの頭を乗っけて、髪を撫でる。直がわたしによくする撫でかた。顔を上げて温かな視線と目が合うと、直は申し訳なさそうに眉を下げて小さく笑った。
「……ごめんね、栞。わすれてほしいけど、わすれないで」
「わすれてって言われても、わすれないよ」
……わすれられるわけ、ない。だって直は、わたしと同じことを考えてくれていたのだから。



